石垣産和牛ブランドの確立と観光振興とリンクした新鮮で安心安全な食肉生産を目指す

株式会社 八重山食肉センター

代表取締役 石垣市長 中山 義隆

はじめに

石垣島は、日本列島及び琉球弧の最南西端の八重山諸島に位置し、多くの有人・無人島からなる海洋島嶼域の中にあり、亜熱帯海洋性気候で年間の平均気温は24度と暖かく、周辺離島及び尖閣諸島で構成され、八重山諸島における交通、経済、交流の拠点として、 また、日本の最南西端都市という立地からアジアに向けた玄関口・結節点として発展してきました。四方をわが国最大の「石西礁湖」を中心としたサンゴ礁に囲まれ、沖縄県内最高峰の於茂登岳を中心とする於茂登連山には亜熱帯森林が広がり自然豊かな街です。
また、石垣島は国内有数の観光地でもあり、平成25年3月に新石垣空港の開港、供用開始により日本国内はもとより、日本の最南西端という地の利を生かしたアジアとの交流拠点として、台湾や香港との直行便の就航や、年間約100回を上るクルーズ船の寄港などにより、平成29年の観光入域客数は新空港開港前の約71万から倍の約140万人の過去最高を記録しました。
このように観光入域客数が伸びている中において、今年、世界最大の旅行サイトと口コミサイトの閲覧数を誇る「トリップアドバイザー」が発表した「2018年世界で人気急上昇中の観光地」で石垣島が、ハワイや世界の名だたる観光地を抜いて堂々の1位に輝きました。
このような状況を背景に、観光関連産業を中心に新規の開業や宿泊施設の増設等が相次ぎ、これと相まって、地元の雇用情勢は有効求人倍率が1倍以上の高水準で推移しており、民間の調査会社による全国市別の「地域元気指数ランキング」においても毎年上位にランクインするなど、成長を続けています。

川平湾

石垣島では最も美しいといわれている景勝地。
国の名勝に指定され、日本百景、ミシュラン三ツ星観光地にも選ばれている

石垣島の畜産

古くより島の大半が牧野として栄えてきた石垣島の畜産は、牛ピロプラズマ病の流行や戦後県内各地より入植した開拓移民への耕地提供により徐々に縮小されてきた。
しかし石垣島は年間平均気温24℃、降水雨量2,100mmの亜熱帯性海洋気候で肉用牛を飼養するための自然的条件に適し、国、県において食料供給基地の形成を図るための計画がもちあがった。
石垣市における畜産基地事業は、復帰後、沖縄特別措置法が施行されるに伴い温暖な気候条件と土地の高度利用を図り、畜産物の安定的供給と畜産経営の合理化を図ることを目的に昭和51年度石垣第一区域を皮切りに約17年余の歳月をかけた国による高補助率の事業により、草地開発整備事業、畜産建設事業、各種事業が導入され、粗飼料生産基盤及び施設、機械整備がなされました。また、肉用牛の改良についても購買者のニーズに的確に応えるため、国庫補助事業による生産基盤の整備と平行しつつ、優良畜種の選定においても、沖縄県及び事業団の精液を活用し、系統に応じた改良がなされてきました。
その結果、石垣市では本土復帰時に比べ飼養頭数、農業粗生産額共に大幅に増加し、肉用牛の飼養頭数においては沖縄県全体の約四割を占め、肉用牛の生産地として全国から購買者が訪れるようになり、家畜市場において年間約一万頭(平成28年)が取引され、金額も約65億円と畜産石垣島の基盤を築くことができました。
肉用牛生産の一大産地として確立してきた一方で、肥育牛の生産も盛んに行われ、肥育された肥育牛の総称で「石垣牛」としてきました。また、個人、商社によるブランドネーミングも実在した時期もあったが、農協Aコープが沖縄本島と地元店舗に石垣牛の販売を数年間行った結果、次第に認知されるようになり、平成6年より本格的にJAにおいてブランド化に向けた取り組みがなされ、平成12年に行われたサミットにおいて「石垣牛」が使用され、各首脳に絶賛されたことによりブランド化に拍車がかかり、平成14年に商標登録「石垣牛」を取得しました。

八重山食肉センターについて

八重山食肉センターの概要

 弊社は昭和48年12月7日、沖縄の本土復帰に伴い「と畜場法」の本土並摘要により、国・県の強い行政指導を受け、これに対応すべく既設の小規模と畜場を解散しました。そして地域の食肉衛生並びに食肉流通の円滑化と畜産振興を図る観点から、石垣市、竹富町、石垣・大浜・竹富の三農業協同組合、生産者、食肉販売業者の出資により設立しました。
 昭和49年に「と畜場建設許可」を受け施工し、5月に「と畜場施設」が完成しました。
昭和49年5月30日に「と畜場設置許可」を受け、6月1日より業務を開始しました。
 これまで八重山郡民の食肉流通の拠点として役割を果たしてきた弊社は、建築から39年が経過し施設が老朽化していることや、当時主流であった養豚から肉用牛へと畜産情勢が変化したことに伴い、近年の石垣牛を始めとするブランド化により、と畜頭数が増大していることからも、施設の改善、建替えが急がれていました。
 その状況を鑑み、課題を解決し離島地域を支える重要な産業である肉用牛等の畜産振興と石垣産和牛ブランドの確立、観光振興とリンクした新鮮で安心安全な食肉生産の安定を図るため、衛生的な食肉処理施設を整備し、安全な食肉を消費者へ提供していくことを目的に、新食肉センターの建築が計画され、独立行政法人農畜産業振興機構の補助により、平成24年度に実施設計を行い、平成25年度には工事着手し、平成26年4月に供用開始しました。
処理計画に基づいた頭数の確保は弊社の運営を左右する極めて重要な要素でありますが、新施設稼働後においてもほぼ横ばいとなっており、関係機関と連携を図りながら増頭に向けた取り組みを強化しているところであります。
肉用牛においては、JAを中心に「石垣牛」の増頭に向け畜舎の増築を進めていることや、「美崎牛」、「きたうちプレミアムビーフ」といった独自ブランドも観光入域客数の増加に伴い増頭が期待されています。肉用豚においては、大規模農家の飼養頭数が減っていることが要因として処理頭数が年々減少していますが、新たな独自ブランド化が立ち上がるなど、今後の増頭が期待されます。肉用山羊においては、昔より沖縄では薬膳料理として食されてきましたが、「山羊肉は血圧を上げる」との噂があったため、消費も横ばいという状況の中、近年、琉球大学の研究チームが「血圧を上げるのは山羊肉ではなく料理に使われる塩分が原因」とする研究結果を発表した。併せて、山羊肉は赤味が多く、低脂肪・高タンパク質でヘルシーな食材でありながら、鉄・亜鉛が豊富に含まれていることから、女性におすすめ食材として人気を博し、山羊肉の需要が増えてきました。
 このような状況を踏まえ、山羊の生産組合も発足し、行政による山羊の増頭に向けた補助事業も導入され、肉量に優れた山羊の処理頭数の増加が大いに見込まれます。
 弊社は設立当初から財政的に厳しく、新施設稼働の平成26年度においても赤字を計上する中、平成27年度より財政健全化に向けた取り組みを実施し、徹底的なコストの削減や外部委託の自社化、新規事業の導入などにより黒字化を目指して鋭意取り組んでいるところです。

衛生管理

HACCPシステム導入について、平成26年4月にと畜場法施行規則の改正に伴い、と畜業者等の講ずべき衛生処置の基準として、食品の安全性の向上が期待されるHACCP導入型基準を採用することとし、現在、手順1のHACCPチームを編成する準備や、食品の安全を確保していく基本である5S「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「習慣」の社内見直しを進めているところであります。より安心安全な食肉を消費者に届けることや、海外輸出の基礎としてHACCP導入に向け鋭意取り組んで参ります。

施設整備の概要

区分概要
事業名沖縄県食肉価格安定等特別対策事業
離島畜産活性化施設整備事業
所在地沖縄県石垣市字大浜1368番地3
事業主体株式会社 八重山食肉センター
敷地面積9,070.44㎡
建築面積3,340.64㎡
延べ面積3,203.35㎡
用途食肉処理施設(と畜場)
構造鉄骨造
階数地上2階
処理能力大動物 牛20頭/日 小動物 豚50頭/日
オンライン解体方式

処理頭数の実績(過去5年間)

畜種平成27年度平成28年度平成29年度平成30年度平成31年度
1,7071,6471,6401,6481,709
1,9831,7451,5181,3421,262
山羊383330278352410
5481910